水上太陽光発電コラム

【わかりやすく】水上太陽光の技術基準の解釈とは?(最新)

電気設備の技術基準とは?

太陽電池発電設備に関する技術基準は、電気事業法で定められています。

電気事業法において、以下の省令があります。

 

電気設備技術基準(省令)

第4条:

電気設備は感電、火災その他人体に危害を及ぼし、

又は物件に損傷を与えるおそれがない1ように施設しなければならない。

 

これを具体的に定めたのが「電気設備の技術基準の解釈」となります。

 

電気設備の技術基準の解釈

第46条第1項:電線の規定

第46条第2項:支持物の要求性能

第46条第3項:架台の標準仕様

第46条第4項:土砂流出等の防止

 

「支持物」とは、木柱、鉄柱、鉄筋コンクリート柱及び鉄塔並びにこれらに類する工作物であり、電線又は弱電流電線等を支持することを主たる目的とするものを指す用語です。

電気設備の技術基準改正(令和2年6月改正)の背景

2019年9月9日に千葉県市原市内で発生した水上設置型太陽電池発電設備の破損事故を受けて、これまで地上設置を前提にしていた電気設備の技術解釈の「支持物の要求性能」を見直す必要がございました。

 

水上太陽光発電の構造的な特徴として

①水上に設置

②アンカーを用いて水面下の地盤に係留

③樹脂製のフロート

④フロート群を構成

がございます。

 

水上特有の荷重・外力(波力・水位等)や部材性能など、設計時に考慮・検討すべき要求性能をより具体的に規定し、令和2年6月1日に「第46条第2項」が改正されました。

電気設備の技術基準等(令和2年6月改正)の内容

令和2年6月、第46条第2項は以下のように改正されました。

 

第46条第2項第1号 (考慮すべき荷重・外力)

支持物は、日本産業規格JIS C 8955(2017)「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」によって算出される自重、地震荷重、風圧荷重並びに積雪荷重及びその他の当該支持物の設置環境において想定される荷重に対し安定であること。

第46条第2項第2号 (モジュールの支持物の許容応力度設計)

設計は、前号に規定する荷重を受けた際に生じる各部材の応力度が、その部材の許容応力度以下とすること。

第46条第2項第4号 (接合方法)

太陽電池モジュールと支持物の接合部、支持物の部材間及び支持物の架構部分と基礎又はアンカー部分の接合部における存在応力を確実に伝える構造とすること。

第46条第2項第5号 (基礎) 

土地又は水面に施設される支持物の基礎又はアンカー部分は、次の各号に適合するものであること。 

イ 支持物の基礎又はアンカー部分は、上部構造から伝わる荷重に対して、上部構造に支障をきたす沈下、浮上がり及び水平方向への移動を生じないものであること。 

ロ 土地に自立して施設される支持物の基礎部分は、杭基礎若しくは鉄筋コンクリート造の直接基礎又はこれ らと同等以上の支持力を有するものであること。

第46条第2項第6号 (モジュールの支持物の材料の腐食、腐朽、劣化) 

支持物に使用する部材には、腐食、腐朽その他の劣化しにくい材料又は防食等の劣化防止のための措置を講じた材料を使用すること。

 

※第46条第2項第3号は改正なし

 

第1項について、水上太陽電池設備の設計時に考慮・検討すべき荷重・外力等はこちらになります。

事象 荷重・外力 部位 要件
積雪 積雪荷重 架台、フロート 浮力
強風 風圧 架台、フロート、係留部、接合部 係留耐力、接合部耐力、衝撃耐力、各部疲労
波力(動揺)
豪雨 水位 架台、係留部、接合部 浸水防止、係留耐力
水流
凍結 凍結圧力 架台、係留部、接合部(フロート間) 耐圧力、浮き上がりへの追従性
地震 波力(スロッシング) 架台、係留部、接合部 係留耐力、接合部の耐力、衝撃耐力

 

また、第6項では、水面に施設されるフロート等に使用される樹脂材料等については、劣化をしにくい材料又は劣化防止のための措置を要求しています。

 

引用:水上設置型太陽電池発電設備に関する 水平展開及び技術基準等の改正について 令和2年6月3日

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/newenergy_hatsuden_wg/pdf/023_02_01.pdf

発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める法律の制定(令和3年4月)

太陽電池発電設備の増加や設置形態の多様化を踏まえ、太陽電池発電設備に特化した新たな技術基準「発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令」が新たに制定されました(令和3年4月1日)

 

整理すると、

電気設備全般の技術基準が「電気設備に関する技術基準」「電気設備に関する技術基準の解釈」であり、

太陽光発電という発電形式に特化する技術基準が「発電用太陽電池設備に関する技術基準」となります。

 

発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令:

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2021/04/20210401-04.pdf

 

発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈:https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2021/04/20210401-05.pdf

 

発電用太陽電池設備に関する技術基準の第4条では、支持物の構造が定められています。

 

第4条 太陽電池モジュールを支持する工作物(以下「支持物」という。)は、次の各号により施設しなけ ればならない。 
第4条第1項 自重、地震荷重、風圧荷重、積雪荷重その他の当該支持物の設置環境下において想定される各種荷重に対し安定であること。 
第4条第2項 前号に規定する荷重を受けた際に生じる各部材の応力度が、その部材の許容応力度以下になること
第4条第3項 支持物を構成する各部材は、前号に規定する許容応力度を満たす設計に必要な安定した品質を持つ材料であるとともに、腐食、腐朽その他の劣化を生じにくい材料又は防食等の劣化防止のための措置を講じた材料であること。 
第4条第4項 太陽電池モジュールと支持物の接合部、支持物の部材間及び支持物の架構部分と基礎又はアンカー部分の接合部における存在応力を確実に伝える構造とすること。
第4条第5項 支持物の基礎部分は、次に掲げる要件に適合するものであること。

 イ 土地又は水面に施設される支持物の基礎部分は、上部構造から伝わる荷重に対して、上部構造に支障をきたす沈下、浮上がり及び水平方向への移動を生じないものであること。 

ロ 土地に自立して施設される支持物の基礎部分は、杭基礎若しくは鉄筋コンクリート造の直接基礎又 はこれらと同等以上の支持力を有するものであること。

第4条第6項 土地に自立して施設されるもののうち設置面からの太陽電池アレイ(太陽電池モジュール及び支持物 の総体をいう。)の最高の高さが九メートルを超える場合には、構造強度等に係る建築基準法(昭和二 十五年法律第二百一号)及びこれに基づく命令の規定に適合するものであること。

 

上記のように、発電用太陽電池設備に関する技術基準では水上太陽光発電の設置を考えたものとなっています。

まとめ

水上太陽光発電を含む発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令をまとめると以下になります。

 

法律 電気事業法
省令 電気事業法施工規則、電気関係報告規則

発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令

解釈・解説 発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈

 

今後は、太陽光発電については、電気設備の技術基準の解釈でなく、

発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈を参照しましょう。

 

また、この発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令を引用している、

NEDOが発表した「水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2021 年版」はこちらのコラムで解説していますのでぜひご覧ください!

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